Emaki / WATERCOLOUR STUDIES · 22 · 2026.09.08

何を直し、
次に何を確かめるか。

画材の機能は増えた。でも、作品の質が同じだけ伸びたわけではありません。
3名の独立レビューをもとに、計算の不具合を直し、紙と顔料を6条件で確かめました。

01 / 判断を見直す

実装できたことと、絵が良くなったことを分ける。

GPUへの移植で変わった画材

v21では速度だけでなく、紙と色の関係も変わっていました。旧画材の「谷への偏り」と「内部水の横拡散」が省かれています。

同時変更が多すぎた比較

紙の高さ、拡散の式と係数、筆の接触刻みを一緒に変更していました。粒が減った理由を紙だけに決めつけられません。

一致テストだけでは足りない

CPUとGPUが同じ不具合を持てば、一致してしまいます。方向の偏り・理論上の平衡・微小な反応も別に検証しました。

過去の「約57倍」は乾燥・吸収・定着を止めた計算核の比較です。通常の描画全体の倍率でも、今回の方式の測定値でもありません。

02 / コードレビュー

再現できた問題を修正。

110 / 110自動テスト通過

6.21 × 10⁻⁶実GPUとCPUの最大相対L1差

完全一致保存・再開後の4状態配列

Apple M5の実GPUで確認。全設定・全デバイスの保証や実画材への校正ではありません。旧v21指定の再現性は維持し、新方式は明示オプションで使います。

03 / 紙の比較

高さより、色が集まる仕組みが効いた。

同じ紙・水・筆・時間で、流れに使う紙目の高さを10倍にした比較です。各段の左は親和性なし、右はあり。今回の条件では、高さだけの違いは小さく、親和性の有無で細かい濃淡が増えました。

低い紙目 · 親和性なしの実計算画像
低い紙目 · 親和性なし過程を4倍速で見る ↗
低い紙目 · 親和性ありの実計算画像
低い紙目 · 親和性あり過程を4倍速で見る ↗
高い紙目 · 親和性なしの実計算画像
高い紙目 · 親和性なし過程を4倍速で見る ↗
高い紙目 · 親和性ありの実計算画像
高い紙目 · 親和性あり過程を4倍速で見る ↗

淡すぎる結果を見て、筆をゆっくり動かして再確認。

筆の接触を2.5秒から10秒に延ばした追加比較です。装填量は有限のまま、ほかの条件は同じ。親和性4では斑点がはっきり見えます。粒が増えたことを、そのまま美しさとは判定しません。

10秒の筆 · 親和性なしの実計算画像
10秒の筆 · 親和性なし過程を4倍速で見る ↗
10秒の筆 · 親和性ありの実計算画像
10秒の筆 · 親和性あり過程を4倍速で見る ↗

全6枚とも実際の筆・水・待機から計算した画像です。画像へのぼかし、ノイズ追加、元絵の貼り付けは行っていません。元絵を模写する前の画材試験なので、作品の上手さを比べる図ではありません。

測定値と、その読み方
条件細かい濃淡大きなムラ着色範囲
低い紙目 · 親和性なし3.29%4.22%11.56%
低い紙目 · 親和性あり25.76%4.90%11.27%
高い紙目 · 親和性なし3.21%4.22%11.56%
高い紙目 · 親和性あり25.69%4.90%11.28%
10秒の筆 · 親和性なし2.76%4.24%16.70%
10秒の筆 · 親和性あり25.20%4.90%16.47%

細かい濃淡=固定ROIの5×5平均との差RMS÷平均光学色量。大きなムラ=8分割した列平均の変動係数。着色範囲=光学赤色量>.01の格子の割合。いずれも芸術点ではありません。谷との相関は対照でも高く、相関だけでは強さを判断できません。

各群で入力の同一性とtick数を確認。紙上の顔料収支の最大相対誤差 5.30e-7、水の全体収支 1.39e-6。1条件の計算は約62〜76秒、材料格子512×320。1台・各1回の記録で速度比ではありません。

元の測定データ ↗

04 / 採否

実験機能として残す。全景の既定値にはしない。

親和性の処理で、失われた紙との相互作用を一つ戻せました。一方、強度4の斑点は静かな山や水面には強すぎる可能性があります。大きな帯の形も残っています。現在の採用画はv20のままです。

次は「同じ紙を細かい格子で計算しても、同じ紙に見えるか」を優先します。細密化で見え方が変わり続ける状態では、筆の使い方を覚えるAIにも安定した技法を教えられません。

05 / ロードマップ

小さな実証から、完成画へ。

  1. R0 · 実施済み

    不具合と評価方法を修正

    再現テスト、CPU/GPU、保存と再開が通る。現行作品と未実装項目を保護。

  2. R1 · 実施済み

    紙の高さと顔料の集まり方を切り分ける

    同一入力の4条件+接触時間だけ変えた2条件。量の保存と実画像を比較。

  3. R2 · 次に着手

    紙の尺度と解像度を揃える

    同じ凹凸を面積平均して格子比較。時間刻みも半分にして収束を確認。紙を細かくするほど粒が増える状態なら全景へ移さない。

  4. R3 · 計画

    顔料・吸水・にじみを別々に校正

    顔料の属性輸送、内部水の横拡散、sizingを一つずつ比較。色と水の収支を保持。

  5. R4 · 計画

    林と山裾の小さな習作へ移す

    複数の紙seedで輪郭・明暗・にじみを確認。同型の樹冠や長い塗り継ぎは筆順で直す。

  6. R5 · 計画

    初見のAIに技法を渡す

    会話履歴なし、能力表と実行JSONだけで対照→観察→修正。成功率と必要な助言を記録。

  7. R6 · 計画

    全景を描き、元絵と比較

    大きな形・明暗・紙目・焦点・余白でv20を超えた候補のみ採用。字幕と音楽付きで書き出す。